イケメン詩人「カミングス」鋭い感性が生んだ斬新なタイポグラフィについて
こんにちは~、最近詩にどハマりしてますミツムジです。
本日もご訪問ありがとうございますm(__)m
・・・ということで、本日はこちらの美中年↓
「E・E・カミングス」の魅力についてたっぷり紹介しちゃいます☆彡
E・E・カミングスって?
ユニテリアン派の聖職者の子としてマサチューセッツ州ケンブリッジに生まれ、ハーヴァードに学んだ。
第一次大戦に志願してフランスに渡り、スパイの嫌疑で監禁されるという不条理な経験を The Enormous Room (1923) に書いた。
以後ニューヨークで詩作と画業に専念し、破天荒な表記法で愛と自由を謳歌する Tulips and Chimneys (1922)ほか多くの詩集で高い評価と人気を得た。
(引用元:亀井俊介・川本皓嗣編(2014)『アメリカ名詩選』岩波文庫.)
(※「ユニテリアン派」・・・? ⇒ キリスト教の一派。三位一体説(「父である神」と「子であるイエス」「聖霊」が三者一体で唯一の神だという教え) に反対して、神ひとりの唯一性を強調してる人たちのこと、らしいっす)
写真を見ると、ハンサムな上にとってもオシャレですよね
今でいうリア充?オーラがたっぷり出てます
彼の本名はエドワード・エスリン・カミングス(Edward Estlin Cummings)
詩人のほかに、画家、随筆家、劇作家とたくさんの肩書きを持つ彼は生涯で900篇以上の詩を残しました
カミングスの詩とは?
・・・で、
そんなマルチな才能を持つカミングスさん、いったいどんな詩を書く人なのかというとたとえば、有名なやつがこれ↓
l(a
le
af
fa
ll
s)
one
l
iness
(引用元:E・E・カミングス『カミングス詩集』(藤富保男訳)海外詩文庫.)
一見して「どうやって読むねん・・・」って感じになりますが、実はこれ、二つの英文でできてます
二つの英文
ひとつめ 「loneliness(孤独)」
l(a
le
af
fa
ll
s)
one
l
iness
ふたつめ 「a leaf falls(葉がひとつ落ちる)」
l(a
le
af
fa
ll
s)
one
l
iness
よく見ると、「loneliness(孤独)」の間に「a leaf falls(葉がひとつ落ちる)」という英文が挟まってるんです
・・・そうなんです
カミングスの詩の特徴は、なんといってもこの独特の「タイポグラフィ」にあります!!
タイポグラフィーってなあに?
活字などの文字をさまざまに工夫したデザイン。どの書体を使うか、大小や色をどう決めるか、配列はどうするかなど出版物やポスターの文字デザインは、1990年代のデジタル化、パソコンの普及で急速に変貌を遂げた。
(引用元:(2012)『現代カタカナ語辞典』旺文社.)
例えばブロガーさんだったら、「どうやったら読者さんが読みやすい行間になるかな~。フォントはどれだとおしゃれかなあ、これだとブナンかな?」とデザインについて考えながら記事を書くのであれば、それも立派なタイポグラフィです!
こんな本も出てます↓
これもタイポグラフィ↓
(昔の日本の新聞広告)
参照:Vintage japanese newspaper ads | Vintage japanese, Newspaper and Japanese
・・・じゃあカミングスの場合はどうなのかというと、実はこの詩、活字の配置によって一枚の葉が落ちてる様子を視覚的に表してるんじゃないかと言われてます
一枚の葉が孤独に散る寂しさを表現
l(a
le
af
fa
ll
s)
one
l
iness
この詩の中で、アルファベットの「l」と「f」、カッコの記号「 ( 」と「 ) 」をそれぞれ葉っぱの形に見立てると、「 le - af - fa 」のところで葉が表と裏を見せながら落ちていき、次の「 ll 」のところで縦に真っ直ぐ落ちていっている様子を表現してるんだっていう解釈があるんです。
「 le - af - fa 」のとこだけ描いてみました↓
(多分こういうイメージ)
このあと、「 ll 」のとこで葉っぱが縦に細長くまっすぐ下に落ちてく感じなんだと思います
そんな風にして一枚だけ孤独にひらひら舞う葉の様子を想像させる配列、ここにカミングス独自のタイポグラフィが表れてるんですね
ちなみにですが、、、カミングスは詩のタイトルを付けない人でした
カミングスの作品についていう時は、タイトルの代わりとして本文の一行目を使うみたいです
この詩の場合は、一行目の言葉そのままに「 l(a 」と呼ばれてます
・・・で、この(すごく呼びにくいタイトルの)「 l(a 」ですが、実は他にもいろいろな読み方と解釈があったりします
ということで、今から(呼びにくい)「 l(a 」について言われてる解釈を3つほどご紹介しま~す
「one」を含んだ「loneliness」
The fragmentation of the word loneliness is especially significant, since it highlights the fact that that word contains the word one.
(引用元:Robert DiYanni. Literature: Approaches to Fiction, Poetry, and Drama. McGraw-Hill, 2003. )
↑本からの引用です
直訳すると、『「loneliness」という単語の分裂が特に重要だ。なぜならその分裂が「loneliness」が「one」を含むことを強調しているからだ』って書いてあります
l(a
le
af
fa
ll
s)
one
l
iness
↑この中の青字の部分ですね
「loneliness」という単語をあえて分解して、「one」だけを一行に孤立させています
この「one」が葉っぱが1枚だけ落ちる孤独感を強調してるんじゃないかっていう解釈です
l(小文字のエル)が数字の1
小文字の「 l(エル)」が数字の1を表わしてるんじゃないかっていう解釈もあります
the isolated letter l can initially appear to be the numeral one.
(引用元:Robert DiYanni. Literature: Approaches to Fiction, Poetry, and Drama. McGraw-Hill, 2003. )
(同じ本からの引用。「孤立した文字「l(エル)」が一見すると数字の1に見える」と書かれています)
この詩は1958年に書かれたものですが、当時は手動式のタイプライターで文字を打っていました
で、タイプライターで文字を打ったとき、小文字の「 l(エル)」と数字の1は全く同じ形をしていたそうです
すると当時はこんなふうに
1(a
1e
af
fa
11
s)
one
1
iness
孤独を表わす「1」が詩のところどころに現われていたことになります
この「 l(エル)」と「1」の繋がりにもカミングスの創意工夫があるんじゃないか、と言われてるんです
全体で1を表わしている
こんな解釈もあります
Robert Scott Root-Bernstein observes that the overall shape of the poem resembles a 1.
(引用元:Robert Scott Root-Bernstein. Sparks of Genius. Houghton Mifflin Harcourt, 2001.)
詩全体の形が1に似てるっていうんです
言われてみれば縦長のこの詩、
大きな「1」っぽくも見えますね
こういうふうにしてたくさんの解釈を知ったうえで改めて詩を眺めると、文字の形、配置を工夫したカミングスの遊び心がたくさん詰まっていて、見ていてほんとに楽しい詩だなあと思います
こちらのサイトに「詩人天気予報」でメディアに大きく取り上げられた詩人菅原敏さんの素晴らしい訳が掲載されているので、詩のイメージについてもっと詳しく知りたいという方はこちらをご参照ください↓
それにしても・・・
一見不規則でみだらな文字の羅列に見える文が人の心に感動を催させるのって、なんだか奇跡を見ているようで素敵ですよね
岩波から出ている『アメリカ名詩選』には、 E・E・カミングスほか、歴史に残る詩人たちのユニークな詩がたくさん載っているのでオススメです!
私はカミングスの詩を大学の講義で初めて知ったのですが、カミングスの斬新かつ清新な感性、新しい言葉の可能性に触れて、もうワクワクがとまりませんでした!!
これからも面白い詩の紹介を定期的にやっていきたいと思いますのでよろしくお願いします(o^∇^o)ノ
本日も最後までお読み頂き、ありがとうございました!!